最近では日本各所の産地で造られたワインをよく目にするようになりました。
ラベルをよ〜く見てみましょう。
国内製造ワイン、日本ワイン、東京ワイン、GI.Yamanashi…
何が違うのでしょうか?
甲州、マスカットベリーA、キャンベルアーリー…
海外のワインでは見たことない品種ですよね。
日本のワインのことをよく知っている日本人は意外にもそれほど多くありません。
今回は日本のワインについて少しだけ詳しく知っていただき、その奥深さと日本ならではの面白さの一端をお伝え出来ればと思います。
日本ワインを取り巻く現状
日本のワイン造りは驚くべきことに明治初期から始まっています。そこから山梨県を中心に全国へ広がっていき、今ではなんと全都道府県でワインが生産されています。
意外にも長い歴史を持っている日本のワインですが、残念ながら2018年まで、海外から輸入した濃縮ブドウ果汁を使って「国内産ワイン」として販売されるワインが8割以上を占めていました。
※現在は「国内製造ワイン」の表記ですが、これでも分かりにくいですね。
欧州では、イタリアのブドウジュースを使ってワインを造り、フランス産ワインとして売ることは出来ません。
そんな当たり前のことが法整備されたのがつい最近のことで、そのきっかけも日本産ブドウを使って日本で製造した「日本ワイン」が海外のコンクールで金賞などを受賞したことによります。
日本のワイン生産者の長年の苦労と努力がなければ、決してなし得なかった偉業と言えます。
このような経緯で欧州のような、産地の階層構造が法整備化され、ようやく消費者が良質な日本ワインを、より分かりやすく楽しめるようになってきたのです!
つまり、「東京ワイン」が東京産ブドウを使って東京で製造したワイン、ということが今では一目で分かります。
更に、産地としての特性が明確なものには「GI」の表記がされ、2022年現在、山梨、北海道、山形、長野、大阪の5県が認められています。
日本ワインの品質は向上を続けているので、その土地ならではの味が楽しめるようになってきていますし、海外産ワインに引けを取らない美味しさがありますので、GIの表記を見つけたら是非トライしてください!
日本ワインの面白さ
個人的に日本ワインの一番面白い所は、その生産エリアの広さ、多様性、難しい条件をクリアする生産者の努力や工夫が、世界中のワインに負けないくらい詰まっている所にあると思います。
生産地の緯度差だけをとっても、フランスが9度、南北に長そうなチリでも13度ですが、日本はなんと18度もあります!
冷涼な北海道には梅雨がありませんし、亜熱帯の沖縄は台風が多く接近します。太平洋側では夏に雨が多く降りますが、瀬戸内ではほとんど降りません。
このような多様性に対し、日本各地のワイン生産者はそれぞれの気候に合った工夫を凝らしており、その対応策も様々です。
北海道では寒さに強いドイツ系品種ですら、木ごと土に埋めて越冬させますし、沖縄や九州では台風を避けるために収穫時期を早めることが多いです。
どれも日本でしか見られない光景です。
また、全国的にほとんどのワイナリーの生産者の方が苦しんでいるのは、梅雨時期の日本の雨の多さです。
梅雨の時期とブドウの成長期がちょうど重なってしまい、水分を多く吸収することで味わいがぼやけてしまうだけではなく、実が割れてしまったり、湿度によってカビが生えてしまいます。
特にカビが天敵で、ブドウの房を想像すると分かるように、実と実の間の隙間は風通しが悪いですよね。
ですから、粒の小さな欧州の品種よりも実が大きく、房の中の風通しが良い、巨峰のような食用品種や、カビに強い甲州といった日本独自の品種が向いているのです。
実が大きくなることで皮の比率がどうしても小さくなるため、濃い赤ワインが作りにくくなってしまいますが、日本ワインはその繊細さを生かし、出汁文化の繊細な日本食に合う綺麗で奥ゆかしい味わいを得意としています。
その土地で作ったワインは、その土地の料理と合わせることが多いですが、日本でもその法則が当てはまっていて面白いですよね!
まとめ
日本のワインはヨーロッパと比べると美味しくない。
なんてことをいう人をよく見かけます。
それは、うどんより蕎麦の方が美味しいに決まってる。
と言うのとニュアンスが似ています。
同じ麺類でもそれぞれの良さがありますよね?
欧州には欧州の、日本には日本の良さがあります。その違いを理解し、是非日本ワインも楽しんで、日本ワインの生産者を応援してみてはどうでしょうか?