当たり年のものは世界のワイン上位1%にランク付されるものもあり、ヴィンテージとなれば年数が進むたびに青天井ということから、投資目的で売買されることも多い銘柄です。
ナパバレー5大シャトーの1つであり、カルトワインとしても知られていますが、実は同社のファーストワインになれなかったワイン、セカンドワインです。
なぜ二級品とも言うべきセカンドに価値があるのか、またカルトワインとは何か?その背景に迫ります。
セカンドワイン、その限りなく完璧な世界
ボルドーが最高品質である理由
ワイン大国フランスでは、ワインの格付け競争は格段にハードな環境です。その中で近代ボルドーのワイン品質向上に大いに貢献したのが、徹底した独自の選別作業でした。
選別作業は出来上がったワインだけではなく、土の品質や区画、ブドウの樹齢などの選別から始まり、様々な工程のステップで行われ、どんどん選別されていきます。
そのステップの数や、どれだけファーストとセカンドに差をつけるのかは生産者ごとに異なりますが、選別の過程が多ければ多いほど、ワインの品質はより厳選されます。
セカンドワインの誕生
ファーストになれなかったワインとはそもそも品質が悪いわけではなく、あくまでも生産者がファーストに求める基準に満たなかったというだけであり、選別のステップが多い生産者の場合、わずかな差でセカンドになっていることも多く、実際選別のステップがゆるい(少ない)生産者のワインのファーストの品質をはるかに上回っていることも少なくありません。
一方でファーストに格付けされるワインへの条件が多ければ多いほど、ファーストの基準を満たさないワインやブドウが増えます。
通常その分のコストもファーストに上乗せされるため、どうしてもその価格は上がり、また販売数も限られることになります。
このことからセカンドはセカンドとして市場に提供することになりました。
生産者にとってはファーストの価格高騰も抑えることができ、またファーストの格付け・評判が上がれば上がるほど、セカンドの評価も上がりますので、長期的に見ればセカンドワイン造りはシャトー的にはある種の投資というわけです。
ワインにおけるセカンドとは、必ずしもネガティヴな意味ではなく、むしろ”almost ファースト”というポジティヴな意味なのかもしれませんね。
まさにレアグルーヴ、カルトワインとは
スクリーミング・イーグルといえば、カルトワインとしても有名です。
カルトワインとは、歴史あるシャトー・伝統的なテロワール(名産地)などのメジャーなスケールに対し、全くの無名の生産地・生産者のワインが有名シャトーを凌駕するという現象から生まれた最近のワイン用語です。
そのネーミングの元になったと言われるのが有名なパリ審判です。
ワイン版「パリ審判」、その日世界が驚愕した
このワインの価値・格付けのパラダイムシフトともいうべき事件が起こったのは1976年のこと。
パリで有名なワインスクール、アカデミー・デュ・ヴァン主催で、カリフォルニアワインとフレンチワイン、それぞれ赤白10本をブラインドテストをしてのランキングが企画されました。
審査員にはAOC検査委員、有名グルメ誌ワイン担当、ミシュランレストランのシェフ、トゥールダルジャンのシェフ・ソムリエ、有名シャトーオーナーなどを迎えており、ややカリフォルニアに旗色が悪いような選考状態だったのですが、結果はなんと、モンラッシェやロートシルトなど最高級銘柄を含むラインナップにも関わらず、赤・白どちらもカリフォルニアが1位になるというとんでもない結果になったのでした。
この驚愕の事件はあっという間に世界を駆け巡り、1位の赤白のワインはそれまで世界的には無名、米国内でも営業に苦労していたにも関わらず、数日で在庫がカラになりレアワインとして価格高騰という現象が起こり、「シャトーとテロワールが全て」というワインの血統主義が覆されることになりました。
とは言え、長年世界中の需要に応えてきた欧州のシャトーと比べると、まだまだ小規模な生産者が多く、いわばインディーズのような側面があることから、どうしても供給率が下がります。
更には徹底して少数精鋭のワインしか提供しないなど、オーナー独自のこだわりがあり、ますます貴重なワインとなります。
スクリーミング・イーグルもその代表格に数えられる銘柄で、同社の顧客メーリングリストに載ることすら困難、という状況は、まるでいちげんさんお断り・会員制・連絡先非公開の高級店さながら。
almostファーストのクオリティのセカンドであること、超レア・入手困難なカルトワインであること、スクリーミング・イーグルは今後もますます貴重な存在になりそうです。