ワインを色で分類する際、大きく赤・白・ロゼの3種類に分けられますが、世界にはこの3色以外の色に分類されるワインがまだ2種類あるのはご存じでしょうか?
それは、白ブドウを赤ワインと同様に皮ごと醸造した、ジョージアで有名な「オレンジワイン」と、特殊な醸造方法で造られる、フランスのジュラで有名な「黄色ワイン」です。
緑、黒、クレレ(濃いロゼ)などの色で表現される個性豊かなワインも確かに存在しますが、製法で分類した場合には5色になるかと思います。
今回は、その製法も味わいも、ほかのどのワインよりも特徴的な「黄色ワイン」について紹介していきます。
黄色ワインの作り方
黄色ワインは一般的に「ヴァン・ジョーヌ(フランス語で黄色いワイン)」と呼ばれ、フランスのジュラ地方でのみ生産されています。
使用する品種は、皮が厚く、糖と酸がしっかりしているサバニャンと呼ばれるブドウで、これを使ってまずは白ワインを造ります。
この際、ブドウの糖が完全にアルコールへと変化するまで発酵させるため、その味わいは極辛口となります。
その後ワインは、収穫翌年から6年目の12月15日までオーク樽で熟成させるのですが、フランスワイン法で最長の熟成期間となっています!
酸と糖が豊富なサバニャンを極辛口に仕上げることで、長期間の熟成に耐えうる白ワインを造っているわけですね。
そして、ここからがヴァン・ジョーヌとしての味わいや香りを造り出す、非常に特殊な工程になります。
通常、長期間ワインを熟成させる場合はウイヤージュといって、樽から自然蒸発した分のワインを樽に補充して酸化を防ぎ、ワインの品質が壊れないようにするのですが、ヴァン・ジョーヌではこれが禁止されています!
すると、樽の中にできた空間には空気と一緒に微生物が入り込んできますが、熟成中のヴァン・ジョーヌには栄養となる糖分が全く残っていませんし、通常の微生物ではアルコール濃度が高すぎて繁殖することができません。
しかし、ジュラ地方に生息している、アルコールを養分として繁殖する特殊な土着酵母がワイン上面に膜を張りながら繁殖する(酸膜酵母)ことで、他の微生物の混入や過度の酸化を防ぎ、ウイヤージュ無しでの長期熟成を可能にしています。
更に、発酵から熟成終了までスーティラージュ(澱引き)も一切禁止されています!
つまり、役目を終えた酵母(死んだ酵母)がどんどんと底にたまっていき、酵母から溶出したアミノ酸がヴァン・ジョーヌに独特の旨味を与えていくのです。
言ってしまえば、樽熟成中は一切生産者が働かない「手抜きワイン」なのですが、ほったらかしている間に起こる全ての現象が奇跡的に良い方向へと働き、類まれなる上質のワインが完成します。
最後の瓶詰では、ヴァン・ジョーヌは補充無しの長期熟成によって目減りしているので、620mlの特殊なボトルに詰められます。
黄色ワインの味わい
気になるその味ですが、熟成中に樽の中で発生する産膜酵母によって得られるその独特の香りや風味は、他のどのスティルワインにも見出せない特徴的なものです。
驚くべきはその香りの多様性と変化、そして味わいの深さで、特にクルミやアーモンドのようなナッツ香や熟した洋梨、杏、ハチミツのような甘味のニュアンスも見られ、上質なものになると開栓後半日~24時間ほどで、まるでソーテルヌのような甘美なアロマを発しつつ、味わいはしっかりと辛口という唯一無二の個性へと到達します。
ヴァン・ジョーヌは造り方、味わいを発揮させるまでの時間、グラスに開けてから真の姿を見せるまでの時間と温度変化が非常に重要です。
紹興酒や酒精強化ワインであるシェリーに似た味わいとよく表現されるのですが、そのどれよりも複雑な味わいはヴァン・ジョーヌならではといえるでしょう。
ヴァン・ジョーヌは、開栓直後の一回のテイスティングでは、これならもっと安いシェリーや紹興酒で十分だな、となってしまいます。
ですから、ヴァン・ジョーヌを手に入れた際には、十分な時間を確保して楽しんでいただきたいと思います!
まとめ
そんなヴァン・ジョーヌですが、日本ではまだまだその認知度は低く、置いているお店はほとんど見かけません。
さらに値段も5000円~15000円程度と高価ですが、他のワインとは一線を画すその味わいを一生に一度は経験してみてはどうでしょうか?
ワインの新たな魅力・神秘を知ることで、もっとワインの世界が好きになると思います!