高いワインを買ってみたけど、渋くて酸っぱくて飲みにくかったし、正直あんまり美味しくなかったよ!こんな話を聞いたことはありませんか?
これは決してワインが悪いのでも、この人が偽物を買わされてしまったわけでもありません。
ワインは多くの場合、ボトルに年号が記載されていますよね?そこには、時間とワインの奥深い関係性が秘められているのです。
この関係性を紐解いていくと、今回のこの事件の真相が見えてきます…。
ワインの飲み頃
飲み頃という観点から、ワインは大きく「早飲みタイプ」と「長期熟成タイプ」の2種類に分類することができます。
早飲みタイプは、スッキリとした酸味やフルーティーな香りが特徴的で、まさに取れたての果実のような魅力があります。
そして長期熟成タイプは、柔らかな酸味やタンニンが特徴的で、熟成香と呼ばれる複雑な香りを楽しむことができます。
さて、冒頭でご紹介した渋くて酸っぱくて高いワインはどちらのタイプでしょうか?
おそらく、長期熟成タイプのワインである可能性が高いでしょう。
なぜなら長期熟成タイプのワインは、文字通り長い時間をかけて溶け込んでいる有機物質を変化させていく必要があるため、腐敗のリスクをできる限り抑える必要があります。
だからこそ、抗菌作用のあるタンニンや酸を多く含む、つまり渋くて酸っぱいワインが適しているわけです。
そして、神様のいたずらか、豊富な酸とタンニンは長期熟成を経ると、驚くほど味わい深いものとなります…。
つまり、ワインを飲んで渋くて酸っぱい!と感じたら、まだまだ熟成していない、飲み頃を迎えていないワインなのです。
ちなみに、長期熟成タイプのワインの方が価格が高い傾向にあるのは、適切な環境での保管コストや、ワインの持つポテンシャルに対する付加価値によるものです。
デキャンタージュの必要性
では、長期熟成タイプのワインを購入し、もしも飲み頃が早かった場合はどうすれば良いのでしょうか?
それは、デキャンタージュをしてください!
デキャンタージュとは、デキャンタと呼ばれる底口の広いガラス器具の中にワインを注ぎ、空気との接触面を広げてやることです。
デキャンタージュの効果は、ワイン中成分の酸化、つまり熟成を無理やり促進させることで、強すぎる酸味や渋みをまろやかで口当たりの良いものにし、酸素と触れることで眠っていた香りも現れてきます。
このことを一般的に、「ワインが開く」と表現します。
じゃあ、わざわざ長い年数置いておく必要もないし、全部デキャンタージュすればいいじゃん!
なんて声が聞こえてきますが、デキャンタージュはあくまでも応急処置と考えてください。
確かに、デキャンタージュによって味わいはまろやかになり、香りも立ちますが、それでは本来のポテンシャルの半分も発揮しません!
熟成香と呼ばれる香りの成分は、決して急激な酸化では作られないのです。
ですから、そろそろ飲み頃かな?という時期に開けてみて、バッチリ美味しければ儲けもの!まだ少し酸っぱ渋いな…という場合にはデキャンタージュを。
そして、香りも味も薄ければ、残念ながら飲み頃は過ぎており、復活させる方法はありません。
ワインの飲み頃は、熟練のソムリエが予想するものですが、やはり開けてみないと実際にはわかりません。
もう飲めるかな?まだ早いかな?
というドキドキ感もワインの魅力の1つなのです!
ワインの変化を楽しむ
さて、長期熟成タイプのワインの楽しみ方はわかりましたが、デキャンタなんて家に無いよ!という声も聞こえてきます。
そこで、ご家庭でもできるデキャンタージュの方法を今回はご紹介します!
その方法はなんと……「何もしないこと」です!!!
抜栓後にテイスティングをしてみて、飲み頃には早いと感じたら、そのまま30分~2時間ほど放置してみてください。デキャンタと同じ効果が得られます。
そして、お行儀よく2時間も待つ必要もありません!少しずつ飲みながらワインを開かせていくと、味わいが変化していく過程をじっくりと楽しめます。
そんなに待てない!
という方は、スワリングといって、ワインを注いだグラスを手で回して空気と触れさせてください。
まとめ
今回は長期熟成タイプのワインの飲み頃、飲み方についてお話しました。
しかし、人によって好みは違いますし、ドンピシャのワインの飲み頃は誰にも分からないので、飲むタイミングに正解は無いと思っています。
どんな熟成度合いのワインであっても、それはそのワインの持つ魅力の1つであることには間違いありません。
向き合い方さえ心得ていれば、多少飲み頃が若くても、きっとそのワインはあなたを最大限に楽しませてくれるでしょう。