皆さんはワインをどのように選んでいますか?
値段、ラベルの見た目、品種、売り文句…
判断基準は様々ですが、産地で選ぶという人も多いのではないでしょうか?
ワインを推している販売店の棚やお店のメニューにはフランス、イタリア、スペインのような旧世界と呼ばれる伝統的な産地のワインの他に、アメリカやチリ、オーストラリアのような新世界と呼ばれる、歴史的に新しい生産国のワインも目にすることができますよね。
今でこそ手頃で美味しいと言われるようになっていますが、一昔前までは、ワインと言えばフランスワインと言われており、ワイン専門店で旧世界と呼ばれるヨーロッパ諸国のワインをメインに取扱うのみでした。
一体何故でしょう?
新世界の生産者のレベルが上がってきたのか?
ワインの消費量が増えてきて、消費者が多くのラインナップを求めるようになったのか?
実は、「パリの審判」と呼ばれる歴史的大事件がきっかけで、世界中のワインの常識を覆したのが始まりなのです…。
パリの審判について
1970年代、質のいい高級なワインといえばフランス産というのが世界の常識でした。
そんな時代に、本人も思いもよらない激震を走らせたのがパリ在住のイギリス人ワイン商であるスティーブン・スパリエでした。
スパリエのワインショップは当時のパリでは珍しく、英語で懇切丁寧に説明をし、世界初のワインスクールが併設されていたこともあり、英語を話すパリ在住の外国人には大変評判でした。
また、アメリカ人ワイン関係者も多く訪れ、その際にアメリカワインをお土産に置いていくこともしばしばあり、そのおかげでスパリエはカリフォルニアワインの美味しさに気づいていました。
そして、カリフォルニアワインの美味しさを少しでも知ってもらうために、フランスワインとカリフォルニアワインをブラインドテイスティングで対決させるイベントを思いついたのです。
しかし前述のとおり、フランス以外のワインは発展途上といわれ、聞いたこともないカリフォルニアワインが勝利するなどありえないことだと、このイベントに興味を持つ人はほとんどいませんでした。
そして対決当日、パリ郊外で行われたテイスティングには、スパリエ氏の人脈を生かし、フランスのワイン界を代表する名だたる審査員が参加し、フランスワインも超一級のものが用意されていました。
テイスティング審査が始まると、審査員たちは試飲をしながらカリフォルニアとフランスを見抜こうとしていましたが、一流の審査員でもどれがフランス産で、どれがカリフォルニア産なのかわからず混乱していました。
例えば、香りがしないからカリフォルニア産だと一人の審査員に評価されたワインがフランス産であったりもしました。
混乱を生んだ対決の結果は、白ワイン部門では1位、3位、4位がカリフォルニアワイン。
赤ワイン部門でも、カリフォルニアワインが1位を獲得しました。
この衝撃的な結末は、タイム誌に「パリの審判」というタイトルで掲載され、瞬く間に世界中に知れ渡ることとなったのです。
アメリカの勝因
それでは、なぜ無名だったカリフォルニアワインが、フランスの一流ワインに勝つことができたのでしょうか?
それは、カリフォルニアの気候が安定していることがまず挙げられます。
カリフォルニアでは、ブドウの生育期間には雨がほとんど降らず、日照時間も豊富という、ブドウにとっては最高の生育環境で、グレートヴィンテージとなるボルドーの気候が毎年のように発生していたためでした。
また、アメリカのワイン造りが自由で多様なことも理由の一つです。
フランスでは、栽培方法から醸造方法まで法律で指定されていますが、アメリカはルールにとらわれず、良いものはどんどんと取り入れていきました。
例えば、当時画期的であったステンレスタンクでの醸造も、もともとはカリフォルニアならではのものなのです。
もちろん、生産者の技術や努力もありますが、フランス以外でも高品質のワインを造ることができる気候や土壌、技術があるという事実が証明されたことは、ワイン界にとって大きな変換点と言えるでしょう!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ワインを産地ではなく、質で評価する楽しさと、新世界のワインの無限の可能性に、きっと魅了されると思います!
是非、ボルドーとカリフォルニアのワインを揃えて、あなたもパリの審判の審査員になった気分でブラインドテイスティングに挑戦してみては?