皆さんは、「アイスワイン」をご存じでしょうか?
アイスワインを直訳すると「凍った葡萄酒」になりますが、決してシャーベット状のワインのことではありません。アイスワインはデザートワインに分類されるワインの一種です。
今回は、そんなアイスワインの魅力やその起源についてご紹介します。
アイスワインとは
アイスワインの名前は、樹上で凍らせたブドウをそのままプレスして製造する製法に由来します。樹上で凍らせることにより果実の中の水分だけが氷結し、凝縮されて糖度が高まったブドウの果汁を取り出すことができるのです。
その濃縮された果汁を使用して製造されるアイスワインは、繊細かつまろやかな甘みと芳醇な香りが特徴のデザートワインです。
樹上のブドウが凍りつくような厳しい自然環境が作り出した、奇跡のワインと言えるでしょう。
高い希少性をもったデザートワイン
デザートワインは、主に食後に楽しまれる甘口ワインのことです。濃縮された果汁を用いて製造される極甘口のアイスワインも、それに分類されます。
アイスワインの場合は、完熟して糖度の高まった果実が凍り付くことによりさらに凝縮され、とろけるような甘みが作り出されるのです。しかし、凍った果実一房から採取できる果汁は、たったのスプーン1杯分です。
長期に渡って樹上に果実を実らせておく必要があるため、鳥や鹿などの獣害が発生することも少なくありません。そういった理由から希少性が非常に高く、「貴族のためのワイン」とも呼ばれています。
強い甘みとさっぱりとした飲み口が特徴
アイスワインの味の特徴は、強い甘みとさっぱりとした舌触りです。口に含むと芳醇な香りとともに強い甘みが広がり、心地よい酸味とともに喉を通過していきます。
同じデザートワインでも、ハチミツのようなまったりとした豊かな甘みを持つ貴腐ワインとは甘みの特徴が異なるので、好みや気分によって飲み分けてみるのも良いかもしれません。
アイスワインの起源
アイスワインは、現在から200年以上も遡った18世紀末のドイツ・バイエルン地方北部にあるフランコニアの農村で偶然誕生しました。
その年の冬、想定外の霜が発生した農場では、完熟したブドウが収穫できずに凍ってしまうという事態に陥りました。それまでの常識では凍ったブドウは処分するしかなく、生活の苦しかった農民達は頭を抱えることになります。
しかし、農民達にはブドウを処分する余裕はなかったため、仕方なく凍ったブドウでワインの製造を行いました。その結果完成した上品な甘みと芳醇な香りを持ったワインが、アイスワインの始まりと言われています。
アイスワインの製造法
アイスワインの製造は、収穫された凍った果実をそのままプレスし、甘みが凝縮された果実を取り出して行われます。取り出した果汁を発酵させる工程に通常のワインと大きな違いはありませんが、収穫に関してはいくつかの独自ルールが定められています。
まず、収穫時期が通常と異なります。
一般的な場合は9月から10月頃に収穫が行われますが、アイスワインの場合は12月から2月頃に行うことになっています。
他にも、
「収穫するのは連続3日以上マイナス8℃以下が続く日でなければいけない」
「収穫する時間はぶどうが凍っている夜~夜明けでなければいけない」
「収穫は手摘みで行うこと」
など、様々な規定があります。
アイスワインの生産地
アイスワインの製造はドイツで発祥した後、隣国のオーストリアにも伝わりました。
20世紀後半にはドイツの生産者達がアイスワインを安定製造できる地を求めてカナダへ移住し、オンタリオ州のナイアガラ・オン・ザ・レイク地方で製造を始めました。その後、アイスワインという名称が国際登録商標として登録され、ドイツ、オーストリア、カナダの三カ国以外で製造されたものには使用できなくなっています。
仮に他の国で同じ製法を用いてワインを製造したとしても、そのワインをアイスワインと呼ぶことはできないのです。
人工的な味の再現
近年では、アイスワインの味わいを人工的に造り出す製造法が開発されています。その手法は「クリオ・エクストラクション法」と呼ばれ、人工的にブドウを凍らせ、アイスワインの味を再現しています。
この方法を使えば、アイスワイン製造に伴う様々なリスクを回避できるため、安価で増産することが可能です。日本国内でもこの方法を使用してワインを造っているワイナリーもありますので、手ごろな価格でアイスワインの雰囲気を味わいたい場合は利用してみるのもいいかもしれません。
まとめ
アイスワインは、樹上で凍らせた果実を使って造られる極甘口のワインです。その製造方法には様々なリスクが伴うため、非常に希少価値が高いワインでもあります。
近年ではクリオ・エクストラクション法を使用したワインで手軽にアイスワインの雰囲気を楽しむこともできます。甘みの強いワインがお好きな方は、ぜひお試しください。